診療現場からの報告

第67話:EDと男性不妊 [細川]

望んでいるにもかかわらず授からない、いわゆる、不妊症に悩む夫婦は、決して、珍しくなく、10組に1組、専門家によっては8組の夫婦に1組の割合だとされています。

中でも、男性不妊が増えていて、一昔前までは、不妊、イコール、女性の問題だったのが、今や、不妊原因からいっても、男性側、女性側、それぞれ半々の割合だとされています。もしかしたら、最近になって増えたというよりも、昔から、半分は男性側に原因があったのだけれど、表に出てこなかっただけなのかもしれません。

さて、その男性不妊ですが、その原因は、女性に比べると単純で、ほとんどが精液の問題です。ずばり、「精液中に、パートナーを妊娠させることができるだけの量と質の精子があるかどうか」なのですが、最近多いのは、肝心の精液が得られない、すなわち、射精障害、そして、射精以前の問題としてEDが増えているのです。

たとえば、ある統計によると、射精障害の中でも、マスターベーションであれば射精できるのに、奥さんのとの行為では射精できないという膣内射精障害、そして、EDをあわせて、男性不妊の原因の3割から4割にも達しているとの報告があります。

深刻な状況だと言えば、その通りなのですが、アンケートなどをみていると、必ずしも、元々、EDや射精障害があって、そのために、妊娠が叶わないというよりも、なかなか妊娠しないことがきっかけで、勃起できなくなったり、奥さんとの行為で射精に至らなくなってしまったというケースが少なくないのです。

不妊の原因というよりも、たまたま周囲の夫婦よりも、妊娠するのに時間がかかったため、夫婦の営みが、“したいからする”ものから、“妊娠を目的とした”ものに変質してしまい、男性に過度にプレッシャーがかかったため、射精できなくなったり、勃起しなくなったりしたに違いありません。

EDや射影障害には、確かにバイアグラをはじめとするED治療薬が有効でしょう。

ただ、もしも、妊娠を目的とする営みになっているとの心当たりのある方は、予め、その日をきめられたセックスではなく、断固として、したい時にするようにしてみたらいかがでしょうか?

あっけないほど、簡単に治って、お子さんを授かるというケースが少なくありません。少なくとも、夫婦関係は今よりも良好になることは間違いないと思います。