診療現場からの報告

第127話: ザルティア [カウンセラー/森下]

2014年4月、シアリス(タダラフィル)が前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害の治療薬「ザルティア」として販売がスタートしました。
これまで前立腺肥大症に伴う排尿障害では、α遮断薬や5α還元酵素阻害薬が使用されてきました。
しかし今回発売されたザルティアはPDE5阻害薬(ホスホジエステラーゼ5阻害薬)であり、前立腺肥大の治療に新しい選択肢が1つ増えたといえます。(第112話:前立腺肥大症にはシアリスが有効?

当院にED治療で来られる患者様にも、前立腺肥大の治療を受けている方が多くおられます。なかには排尿があまり上手くいかず、なかなか熟睡できないことから肉体的ストレスを抱えてしまいEDを併発したなんてケースもあります。
こうした既存の薬ではしっくりこなかった方には、排尿障害とEDの両方で効果が期待で切る嬉しいニュースだったのではないでしょうか。

でも、このザルティアには5mgと2.5mgという2種類しかなく、非常に少量のタダラフィルしか含まれていません。
御存知かもしれませんが、シアリスはバイアグラ(シルデナフィル)レビトラ(バルデナフィル)に比べ、自然で違和感のない効果を得られるという反面、少々効き方が優しく5mgでは満足のいく効果を得難い可能性が考えられます(個人差はあります)。
ということはザルティア5mgでは、排尿障害への効果はあってもEDにはさほど効果が得られない可能性が考えられます。

そう考えると排尿障害とEDをザルティアで一度に対応ということは、難しいように思います。(シアリスをはじめとするED治療薬の服用時に、排尿がスムーズになったと喜んでおられる患者様は多くおられますが、、、)

一部の週刊誌等ではシアリス(タダラフィル)がザルティアと名前を変えて保険適用になることが騒がれています。こうした騒ぎが大きくなればなるほど、情報の偏りや断片化が進み正確な情報が伝わり難くなります。患者様の中には、ED治療が目的でも保険適用でのザルティア購入ができると勘違いされてる方も出てこられるのではないでしょうか。
残念ながらED治療薬として保険適用をうけてのザルティア購入は行なえません。ザルティアはあくまで前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害の治療薬です。ED治療を目的としたザルティアの処方が行なわれないよう、行政が常に目を光らせています。例えば、前立腺肥大症の診断を受けて、定期的に処方がなされていなければ不正な目的(ED治療など)で処方がなされていると判断されてしまうようです。しかも一度に処方可能な上限は2週間分であり、それ以上の処方は行なえません。前立腺肥大症とED両者を併発されている方であれば問題は無いのかもしれませんが、タダラフィルの含有量の少ないザルティアがどこまでED治療に効果があるかは疑問です。

また、ED治療が目的でザルティアを使用した場合、医薬品副作用被害救済制度が御利用いただけないというデメリットもあります。医薬品副作用被害救済制度とは、医療機関で処方された医薬品を適正に使用したのにも関わらず、ある一定以上の副作用にて健康被害にあった場合に公的機関が治療費の一部を負担してくれるという制度です。
こういったデメリットまで理解されている方って、どれほどおられるのでしょうか・・・

情報はマイナス面よりもプラスの面の方が伝わりやすく、耳に残ります。
気が付くと自分に都合の良い情報に囲まれてしまっているかもしれませんね。

どうしてもザルティアを服用されたいという方は、従来のED治療薬(バイアグラ・レビトラ・シアリス)と同様に自由診療にて処方を受けられてはいかがでしょうか。