診療現場からの報告

第131話: 刺激的なタワシ [カウンセラー/森下]

世の中には様々な性癖や趣味趣向をもたれている方がおられます。中には特定の条件下で無ければ性的な興奮を覚えない方もおられます。
マスターベーションであれば、自分だけのことだけですみますがが、性行為となるとパートナーが存在します。軽い内容であればパートナーに打ち明け、協力(?)していただくことも可能でしょう。しかし特殊性(例えば、女装癖や極度のマゾヒズム等)がある場合、そう簡単にはいきません。パートナーに打ち明けて理解が得られる可能性はどれほどあるのでしょうか。下手をすれば理解が得られないどころか離別という展開も考えられ、カミングアウトにはかなりの覚悟と勇気が必要となります。

殆どの方が、こうしたリスクを負うことができないため、性行為ではなくマスターベーションで欲求を満たしてしまいがちです。なかには、より簡単により強い快楽を得ようと、過度なまでの刺激を得てしまっている方もおられます。

以前にも記載したことがありますが、射精は脳が一定以上の興奮を覚えたときに行なわれます。普段から強すぎる刺激に慣れている脳では、いざ性行為となった時に刺激不足で射精に至らない可能性があります。俗に言う膣内射精障害です。
ピンポイントで自身の趣味趣向にあった刺激は、それだけで十分に強い興奮を呼び起こします。そのうえ、刺激自体も強くする訳です。そんなマスターベーションを続けていれば、膣の刺激では満足できなくなっても仕方ありません。

こういった性癖や趣味趣向を持つことは、実は特殊な事例ではなく、誰もが少なからず持っています。俗に言うフェチもその一つであり、ようは程度の問題なのです。
当院の患者様でも、膣内射精障害で悩まれている方は大勢おられます。
お話を聞くと、マスターベーションの方法に原因が見つかるケースが殆どです。よくあるのが、陰茎を布団やタタミに押さえつけているケース、陰茎を握る力が強すぎるケースです。他にも性的感覚に集中できないといったケースもあります。また、特殊なケースですが幼少時から、亀の子タワシで全身(亀頭の先まで)を洗ってこられたせいか、極度の射精障害を発症されていた方もおられました。

なんにせよ、症状の克服にはマスターベーションの方法を変える必要があります。普段から優しく握り、ゆっくりとした動きで自分の性的感覚に集中する。こうした低刺激に慣れてゆけば、いずれは膣内での射精も夢ではありません。
思春期の頃から、特殊性のあるマスターベーションを行なってきている皆さん、御注意下さい。