診療現場からの報告

第255話:勃起と精液の関係 [カウンセラー/森下]

勃起の硬さが精液の質に関係している可能性がある事をご存知ですか。
順天堂大学浦安病院泌尿器科の辻村晃先生らによる研究報告ですが、不妊症スクリーニングのため結婚直前・直後に同院や関連施設を受診した日本人男性564人を対象に、精液の質を調査されました。

精液の検査結果は、次の通りだったそうです。
精液量の異常    11.0%
精子濃度の異常    9.2%
精子総運動率の異常 10.6%

これらのどれか1つにでも該当する方は、全体の25%もおられたそうです。4人にひとりは精液の質に何らかの問題を抱えているという結果には驚きです。
さらに、精液にこうした異常が見られた方では、勃起機能や勃起の硬さに何かしらの問題を抱えておられる事が多かったようです。また、年齢やBMIが高く、精巣容積は小さいという傾向もあるようです。他には性腺刺激ホルモンである黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンでも有意差が見られたようですが、男性ホルモンであるテストステロンの数値や前立腺の状態では際立った差は見られなかったようです。

精液の質は体調によって変化します。最近の研究では、季節の変化でも精液は影響を受ける可能性があると言われています。そんな中、今回の研究では、一度しか検査が行われていません。このため報告された研究結果を鵜呑みにすることはできませんが、勃起機能と精液の質には何かしらの因果関係があるという可能性は否定できません。

また、EDの原因が何なのかという点も重要です。近年の出生率の低下に歯止めをかけるためにも、もう一歩踏み込んだ研究が行われる事を期待するばかりです。