診療現場からの報告

第298話:シアリスでも認知症対策?[カウンセラー/森下]

昨年末、バイアグラがアルツハイマー型認知症の発症リスクを低減する可能性について記載しました(第292話:バイアグラで認知症対策?)。実はシアリスにも血管性認知症に対して有用な可能性があることが、イギリスロンドン大学セントジョージ校のJeremy Isaac氏らの研究で分かってきました。
脳動脈の狭窄は血管性認知症の主な原因になりますが、現在はまだ治療法はないそうです。シアリスをはじめとするED治療薬(PDE5阻害薬)の血管拡張作用が、脳動脈の狭窄を伴う高齢者の脳血流増加に効果あれば、血管性認知症の治療薬になりうる可能性も出てきます。
特にシアリスは血中濃度の半減期間が長いため作用が長時間継続し、脳へ移行しやすいという特徴があります。
臨床試験の結果、残念ながら脳の血流量の増加は見られなかったものの、白質において1割近い血流量増加が確認できたようです。この白質と呼ばれる部位ですが、実は血管性認知症の発症との関連が深い部位と考えられています。
現段階では高齢者の血管性認知症の治療にシアリスが有用性であるかは明確にはなりませんでしたが、少なからず今後の研究には期待が出来る結果であったように思われます。
それにしても、今回の臨床試験ではシアリスが単回投与されただけだったようですが、なぜ一定期間継続投与されなかったのでしょうね。
<参考>
  • 第292話:バイアグラで認知症対策?