診療現場からの報告

第112話: 前立腺肥大症にはシアリスが有効? [カウンセラー/森下]

ED治療薬であるシアリス(タダラフィル)が、アメリカでは前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害の治療薬として認可されている事をご存知ですか?

バイアグラレビトラ、シアリスといったED治療薬は、共通してPDE5阻害薬と呼ばれています。
私たちの体内にはサイクリックGMPという血管拡張に必要な物質が存在しますが、PDE5という酵素がこのサイクリックGMPを分解してしまいます。バイアグラ、レビトラ、シアリスは、このPDE5の動きを阻害することで血管を拡張させ、海綿体への血流をよくしてEDの改善に効果があるのです。

では、なぜこれらPDE5阻害薬が前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬になるのでしょうか。

前立腺とは膀胱のすぐ下にある臓器で、尿道を取り囲むような位置にあります。前立腺が肥大すると尿道が圧迫され“尿が出にくくなる”“排尿後に残尿感を感じる”“頻尿”といった症状が現れます。こうした排尿障害をともなった、所謂、前立腺肥大症には、治療が必要となります。
前立腺肥大症の治療には ハルナールのようなα1遮断薬という薬が使われます。これは前立腺や尿道の平滑筋に作用し、圧迫された尿道をゆるめることで残尿感や頻尿の症状を改善するものです。

実は、この前立腺や尿道の平滑筋にもPDE5が多く存在しています。PDE5を阻害するればサイクリックGMPの分解を抑制できる、平滑筋が弛緩します。
つまり、収縮した血管を拡張して血流を良くするように、圧迫された尿道を弛めて排尿しやすい状態を作るというわけです。
PDE5阻害薬が前立腺肥大症に有効なこともうなずけます。

ちなみに近年、海外の調査によって前立腺肥大症による排尿障害、過活動膀胱による突然の尿意、頻尿によって夜に熟睡できない状態(こうした症状を総称してLUTSといいます)が、EDの原因となりえることが分かりました。
PDE5阻害薬であるバイアグラ、レビトラ、シアリスはED治療薬としての直接的な効果だけでなく、LUTSからなるEDの治療にも有効なわけですから、前立腺肥大症からくる不快な症状とEDの両方でお悩みの方には喜ばしい話ですね。

ただし、バイアグラ、レビトラ。シアリスのLUTSに対する効果は、前立腺肥大に伴なう排尿障害を改善するだけです。肥大した前立腺の縮小につながるものでは在りません。前立腺肥大症でお悩みの方は、きちんと専門医にご相談下さい。